■大手企業3200社が物流効率化に向けて
2024年9月現在、国土交通省と経済産業省、農林水産省の3省合同で、改正物流効率化法の試行に向けて検討が重ねられています。
物流効率化法は正式名称を「物資の流通の効率化に関する法律」といい、物流効率化法とも呼ばれます。
改正物流効率化法により、特定事業者とされる荷主などは、物流効率化に向けた中長期計画の作成などを求められることになります。
ここに言う“物流効率化”とは、運送ドライバーの荷待ち・荷役時間の削減、トラックの積載率の向上、脱炭素物流の推進など。多岐にわたり、かつ運送事業者の業務にも踏み込んでいることは見逃せません。この点は、「みんなの物流DX」でも触れてきたことでした。
その上で、改正物流効率化法の施行について、冒頭の3省合同会議の中で特定事業者の指定基準案が示されました。
(出典:「改正物流効率化法の施行に向けた追加論点」経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/pdf/002_02_02.pdf
これによると、取扱貨物重量9万トン以上の荷主は特定事業者となり、その対象は実に3200社程度。大企業を中心に多数の荷主に影響があることがわかります。
当然ながら、運送事業者にも影響はありますし、今後、荷主側が求めてくる基準に合わせる必要もあるでしょう。
■デジタコが荷主と運送事業者の法令順守の解決策に
さて、そこで運送ドライバーの荷待ち・荷役時間の管理が重要になってきます。
「デジタル式運行記録計で管理できることを知らない方が多いですよね」と話すのは、小島薫氏。小島氏は一般社団法人 運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)の代表理事であり、運輸デジタルビジネス協議会の設立に携わりました。
「荷主側としては『どうやって荷待ち・荷役時間を把握するか』ということで、大騒ぎになっていて。一方、運送事業者側としては新たな『標準的な運賃』をベースに『時間をデータで管理して、そのデータを元に請求する』ことが大切ですよね」
ここで荷主側・運送事業者側の双方にとって解決策となるのがデジタル式運行記録計(デジタルタコグラフ。通称デジタコ)です。
■“運行”記録計から“業務”記録計へ
デジタコは、トラックなどの「速度」「走行距離」「走行時間」という法定3要素をデータに記録できるものを指します。
これを聞くと、あるいは「単に走った速さ・時間・距離の記録でしかなく、その内訳がわからないのでは?」と感じるかもしれません。その内訳無しには実際のところは正確な荷待ち・荷役時間の管理はできないでしょう。
そしてもちろん、デジタコとはこの3要素“だけ”を記録するものを指しません。各社に機能の差はありますが、他のデータも記録することができます。
富士通デジタコは、この点で多くの機能を持つデジタコの一つです。荷積・待機・荷卸などの業務(作業)ステータスについても記録できます。給油や洗車についても記録できるため、より精緻な業務管理ができると言えるでしょう。
一部の車両では、以前より業務記録と保管が義務化されていますが、デジタコを利用して記録することもできるとされています。また、業務記録に関して、今後全ての車両に拡大される予定です。
小島さんは話します。
「これまで、こうした項目の記録が可能と知っていてデジタコを使っていた会社でも、 “労基”の観点からデータを見ていたかもしれません。たとえば『物流の2024年問題』から、労働時間や拘束時間を管理しなければならないという発想です。言ってみれば『運行記録計』としてのデジタコですよね。しかし、これからは『業務記録計』としてのデジタコを積極的に活用していくべきだと思います。業務記録をしっかりと把握をして、これに基づいて運賃請求を行う。あるいは発荷主さん、着荷主さんにデータを共有して、それに基づいて荷待ち・荷役作業時間の削減をしていく。発荷主・着荷主・運送事業者の3社をデジタコの情報でつなぐ世界が必要だと考えます」
特に車両動態管理システムのtraevo(トラエボ)を情報ハブとして、ネットワーク型デジタコがつながることで、シームレスな情報管理が可能です。
(出典:TDBC)
■「努力が報われる」仕組みをつくる
TDBCの事務局長理事である鈴木正秀氏は次のように話します。
「実際のところ、トラックに乗ったことがない方や、一般の大部分の荷主さんなどはデジタコを知らない方が少なくありません。ただ業界として、デジタルで課題を解決していくために業務をデータ化し、それを活用していくというDXを進めることが非常に重要だと思います。それによって業務の効率化などに、荷主さんも運送事業者さんも取り組んでいただければ、たとえば若い働き手も入ってくることが期待されますよね」
物流業界では人手不足、デジタル化の遅れも課題。これを解決する手段としてデジタコは非常に有力です。
最後に小島さんは強調しました。
「また、実走行距離の記録も、すごく重要ですよね。デジタコはタクシーメーターと同じようなもので、請求のエビデンスとなります。やはり運送事業者やドライバーのみなさんは、効率なども踏まえてルートを工夫しながら走るわけです。そこで実走行距離が記録されることは、工夫した努力がちゃんと報われるというか。走行時間はもちろん、燃料費にも現れますよね。するとCO2の排出量の削減にもつながり、企業としての社会的責任を社外へ伝えるエビデンスにもなるはずです」