トラックドライバーの働き方改善、業界が直面する担い手不足やカーボンニュートラルなどの課題。これに対して、政府は2023年6月「物流革新に向けた政策パッケージ」を決定しました。ここにはデジタル式運行記録計(デジタルタコグラフ。通称デジタコ)の普及促進にも触れられ、2024年にはこの検討会が開かれています。9月現在、3回が開かれた検討会について、ポイントを紹介します。
■国交省によるデジタコ普及促進の検討会
「物流革新に向けたデジタル式運行記録計の普及促進に関する検討会」(以下、検討会)は、国土交通省により開催。過去3回開かれました。
第1回ではデジタコの導入の現状、第2回ではデジタコに係るアンケート結果、第3回ではデジタコの普及目標やフォローアップ手法についてなどが議論されました。
第1回:2024(令和6)年2月28日
第2回:2024(令和6)年7月4日
第3回:2024(令和6)年7月30日
■デジタコ普及促進のための基本的な考え方
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検討会ではデジタコの普及を促進するための基本的な考え方として、以下の3つの観点を挙げています。
- 物流事業環境の適正化
安全運転管理・労務管理・悪質事業者対策を挙げており、そのうえでデジタコが有効なツールだという考え方です。 - デジタコ装着率の向上
運送事業者によるトラックへのデジタコ利用のために、費用負担の軽減(①)や、デジタコの機能やメリットなどの装着意義の理解を高める(②)ための施策を実施。さらに義務化を進めるかどうかの検討(③)も行います。この3点は後に補足説明します。
動態管理機能への捉え方
運送事業者がリアルタイムで走行スピードや運行距離などを把握できる「動態管理機能」を備えるかどうかは、各運送事業者での判断としました。
■デジタコ普及率を2027年に85%へ
2024年現在、対象車両(※)へのデジタコ装着率は約80%です。
これを2027年までに85%に高めるという目標を掲げています。
また、ここで定められているデジタコはどんなものでもいいというわけではありません。瞬間速度・走行距離・走行時間の3つが記録されるという、保安基準に適合したデジタコが対象となります。
これまでと同様に、運送事業者は適当なデジタコを選ぶ必要があるでしょう。富士通デジタコもこの基準に適合した製品です。
※「車両総重量が7トン以上又は最大積載量が4トン以上の普通自動車である事業用自動車」「左記に該当する被けん引自動車をけん引するけん引自動車である事業用自動車」
「特別積合せ貨物運送に係る運行系統に配置する事業用自動車」

■装着率向上に向けて
先述したとおり、検討会ではデジタコ装着率の向上のために「①費用負担の軽減」「②装着意義の理解向上」「③義務化の要否検討」という3つの観点での議論が進められています。以下、それぞれ紹介します。
①費用負担の軽減
令和6年度現在、補助率1/3(補助限度額:2万円/台、通信機能付ドライブレコーダー一体型8万円)とする補助制度があります。
これを見直し、補助率・補助限度額の引き上げが検討されています。
これに加えて、デジタコに必要な機能を「安全運転管理機能(危険運転警告、運行記録の見える化)、労務管理(停車時の扱い区分可能、日報自動作成)に活用できるデジタコ」という方向性で見直しています。
②装着意義の理解向上
そもそもデジタコを装着した効果を十分にわかっていない事業者も少なくないかもしれません。
そこで、デジタコの装着意義や操作方法の理解向上を図るため、セミナーの開催や啓発動画の制作が検討されています。例えば、国交省YouTubeサイトに10分程度の優良活用事例の動画を公開することなどが、検討会の資料で触れられています。
③義務化の要否検討
今後、デジタコの装着を義務化していくかどうかについても検討事項となっています。
2027年まで、毎年トラック運送事業者やデジタコメーカーに対して、フォローアップ調査を行い、その上で検討していくとしています。
■【編集部の視点】検討会の内容から
このようにいくつかの事項について現在、検討が進められています。
2024年9月現在、いずれもその実現性等は不明です。例えば、補助金制度の見直しについても「財源はどこか?」「予算がどの程度確保できるのか?」などの課題もあるでしょう。また、実施されるにあたっては、その交付時期についても注視したいものです。
2027年以降はデジタコの装着が義務化されるのではと予想されます。その上で、本記事で紹介した「②装着意義の理解」は確かに進んでいないような実感もあり、今後も機能の紹介や、法改正の動き・施策等の解説を行っていく予定です。
業界が目まぐるしく変化する昨今。運送事業者の皆さんにも、ぜひ関心を持っていただきたいと思います。